2009年07月29日

『クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった』



以前読んだ『クラウド・コンピューティング』では、あくまでも1ユーザーの視点から、「全体的に目新しい要素は少なく、やはりバズワードにすぎないのかなという印象です。」という暢気な感想を書きました。

しかしユーザーから見てサービスの価格がタダ同然にまで安くなっていくありがたい変化は、本書のようにビジネスの視点から見ると、まさに「衝撃」と呼ぶにふさわしい変化でもあることがよくわかりました。
 いずれにしろ、クラウド・コンピューティング時代の主役はあくまで「サービス」である。ユーザーはプロバイダと事前に合意したサービスレベルが維持されている限り、そのサービスがどのような技術や製品を使って提供されているかを知る必要はない。
 われわれが日々利用している水道や電力などの公益サービスがどこのメーカーの機械、設備を使って供給されているかを気にする人はほとんどいない。同じように、クラウド・コンピューティングが普及したといえる時代になれば、どのベンダーの製品を使ってサービスが提供されているかということは誰も気にしなくなるはずだ。
サービスプロバイダは、サービスレベルを維持できる範囲でできるだけ安価なハードウェアや無料のソフトウェアを使おうとするでしょうから、今まで比較的高価な製品を売ってきたベンダー、SIerなどに向けられる需要が激減していくと思われます。Windowsという高価なOSが過去のものになる日も遠くないかもしれません。
 筆者はクラウド・コンピューティング時代の到来が、IT業界に地殻変動ともいえる大きな変化をもたらすことになると確信している。このパラダイムシフトに対応できない企業はクラウド・コンピューティングが拓く新たな時代に生き残ることは難しくなるということを、改めて強調しておきたい。
昔は花形だったITで飯を食っていくのは非常に大変な時代になることは間違いなさそうです。IT業界への就職や転職を検討している人は読んでおくべき一冊だと思います。

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2009年07月28日

手間をかけてもお金は増えない

銀座なみきFP事務所|■手間をかけずにお金を増やせるか より:
人間には、多少の才能の違いや努力の程度はあるでしょうから、
人によって、それらの対価として得られるお金の量にある程度の
多寡はでてくるかも知れません。
ここまでは労働の対価としてお金を得る場合の話で、
でもだからと言って、これだけ多くの人間がほぼ精一杯努力をし、
お金を得よう、幸福をつかもうと競争しているこの世の中で、
「楽してお金が儲かる」「手間をかけずにお金を増やす」
などという虫のいいお話があるとは私には思えません。
ここで虫がいいと言っているのは、投資のリターンとしてお金を得る場合も含まれているようです。

両者がお金を生み出す仕組みは根本的に異なりますから、混同してはいけないと思います。
(関連記事: 「サラリーマン債券」は債券ではない

確かに、「労働の対価」を得るためには何らかの手間や時間をかけることが必要で、それに見合わない対価を得るのはいかにも不自然で虫のいい話かもしれません。しかし、それと投資に手間をかけるべきかどうかは、まったく別の話です。

手間=時間=お金であり、何らかの手間をかけることはいくらかのコストを負担しているのと同じことです。見かけのリターンは同じでも、投資に手間をかける人はかけない人よりも実質リターンが少なくなります。少しでもリターンを増やそうと必死で「努力」したり「手間」をかけているファンドマネージャーの大半が、逆に市場平均よりもリターンを減らしているのが現実です。

つまり、投資の場合は「手間をかけないほど実質リターンが増える」のです。

では、投資家は何の負担もなく「楽してお金が儲かる」仕事なのでしょうか?
いえいえ、とんでもない。

投資家の仕事は、「リスクを負担すること」です。それ以外の何物でもないでしょう。
世間では誰もやりたがらない嫌な仕事を自ら進んでやっているのに、お金が儲かるどころか損することもあるわけでして。
どう見ても虫のいい話ではありません。

関連記事: 長期投資の本質

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2009年07月22日

『バフェット流投資に学ぶこと、学んではいけないこと』



ウォーレン・バフェットとバークシャー・ハサウェイについて書かれた本はすでに何十冊とあるため、また書くのかという声が上がっても不思議はない。ただ、これまでに出た本の多くはバフェットの投資戦略を分析してはいるものの、偉大な人物へのラブレターと大差ないように思われる。多大な称賛に値する人物であることに間違いないが、大半のバフェット本は客観性を欠いている。彼の投資手法の欠点を指摘できていないし、彼のお気に入りの投資戦術を注意深く分析している場合でも、どの戦術ならほかの投資家もまねできるかという説明はなされていないことがある。そしてそれ以上に重要なのは、バフェットならできるがほかの投資家では事実上まねできない戦術があることについて、説明していない本が多いことだろう。
と書いてあるように、バフェットのずば抜けたパフォーマンスに心酔し、彼の投資手法を真似したくて仕方がない投資家たちの頭を冷やすための本と言ってよいでしょう。
覚えておかねばならないのは、この理論が示すように、ポートフォリオで分散投資すれば常に利益が得られるということだ。
 では、ここで言う「利益」とはいったいどんなものか。一言で言うなら、次のようになるだろう。
 ポートフォリオで分散投資を適切に行っていれば、そのときのリスク量で実現できる最高レベルの期待リターンが手に入る。あるいは、そのときの期待リターンでのリスク量を最小限に抑えることができる。
「利益」という用語が適切でないような(「効果」とか「効用」の方がしっくりくる)気もしますが、分散投資派にとってはお馴染みの理論です。

対照的に、バフェットの考え方はこうです。
集中投資となれば、投資家は投資対象の企業について一生懸命考えるでしょうし、財務の状況などに相当な安心感をもてる銘柄しか買えなくなるでしょう。その結果、リスクはむしろ小さくなるでしょう。
つまり、「一生懸命調べたり考えたりすれば、より正確に未来が予測できるようになる」と言っているに等しく、ファイナンス理論の前提とは最初から話が噛み合ってないと思われます。
バフェットによれば、分散投資は自分には向いていないが、自分以外の大半の人には最適の戦略だという。おそらく想像がつくだろうが、バークシャー・ハサウェイはインデックス・ファンドなどまったく保有していない。バークシャーの資金でインデックス・ファンドを買うのはばかげている、とバフェットなら考えるだろう。しかし、普通の投資家はバフェットが「やっている」通りではなく、「言っている」通りにインデックス・ファンドを買うべきだと、彼は考えているのだ。
平たく言えば、ド素人は真似するなと。(笑)
集中投資がリスクのコントロールに役立つのは、投資先企業の事業計画策定に関与できたり、経営判断にある程度の影響力を及ぼしたりできるときに限られるからだ。投資先企業の資本をどこにどう配分すべきか、経営陣に意見できるだけの株数をもてないのであれば、分散投資をしたほうが大きな利益を得られるというのがバフェットの考え方なのである。
なるほど。
このような特殊な前提が存在するからこそ、上記のように集中投資でリスクが小さくなるという見解を示すことができるというわけです。

関連記事: 分散投資の効果

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2009年07月17日

『マネー力』



『「知の衰退」からいかに脱出するか?』がなかなか良い本だったので期待して読んでみたものの、いまいちでした。

特に第5章「大前式資産形成術」から後は、何か具体的な方法論を語るわけでもなく、彼が学長を務める長ったらしい名前の学校の『大前研一の株式・資産形成講座』の宣伝に終始しており、ほとんど読むに値しません。


それから、前著にも同じことが書いてあったのですが、高齢者が溜め込んでいるお金を市場に誘い出すために相続税を廃止せよと盛んに訴えているのが、どうにも腑に落ちません。そんなことをすれば、いかに財産を減らして相続税を逃れるかを考えていた高齢者たちがお金を使わなくなり、今まで以上にお金の流れが滞ると思います。

高齢者が溜め込んだまま動かないお金を流動させたいならば、逆に相続税は100%にすべきではないでしょうか。

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2009年07月16日

ソフトバンクのスパボ一括「8円ケータイ」消滅へ

ソフトバンクモバイルが実質値上げを決定、「8円ケータイ」は消滅へ - GIGAZINEより残念なニュースです。
従来「新スーパーボーナス」を利用して携帯電話を購入した場合、「月月割」によって基本使用料や通話料、通信料などのユニバーサル利用料を除いた利用料金が割引されていたのに対して、8月19日以降の新規・契約変更・買い増しの新スーパーボーナス契約に関しては月月割の割引対象から基本使用料が除外されるようになります。

これにより月額の維持費が最低でも980円(ホワイトプランの場合)上乗せされることになるため、携帯電話端末の代金を一括で支払い、月月割でホワイトプランの基本使用料などが値引きされることで、毎月の支払いがユニバーサル利用料の8円のみで済む「8円ケータイ」は成り立たなくなるようです。
現在維持しているスパボ一括8円ケータイ、月当たりに換算すると2〜300円程度のコストで済むため、今後も2年ごとにスパボ一括で買い替えていこうと企んでいましたが、やはりそんなウマい話は長続きしませんでした。

今の契約の月月割が終わるのは来年のことですが、その後月々980円を払い続けるとなると現在のコストの数倍に跳ね上がり、私のようなライトユーザーからするとずいぶん高く感じます。それまでにもっと低コストな選択肢が現れなければ、もう携帯電話は持たないことになるかも。

関連記事:
ソフトバンクのスパボ一括携帯を購入
ソフトバンクのスパボ一括携帯を購入(その2)
ソフトバンクのスパボ一括携帯を購入(その3)

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2009年07月15日

『貧困ビジネス』



以前読んだ『貧困大国ニッポン』と同じ著者です。

貧困層を食い物にする詐欺的ビジネスに引っかからないための注意喚起という意味では、それなりに価値のある内容だと思います。本書に出てくるいろいろな事例を見ていると、貧困者をますます貧困にする最大の要因は貧困者自身のリテラシーの欠如に他ならない気がします。まずはそれを補強することこそが重要です。

本書では、貧困ビジネスを次のように定義しています。
「貧困ビジネス」とは何でしょうか? NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長の湯浅誠さんは、「貧困ビジネス」を「貧困層をターゲットにしていて、かつ貧困からの脱却に資することなく、貧困を固定化するビジネス」と定義しています。
 本書では、湯浅誠さんの定義をもう少し緩めて、貧困層をメインのターゲットにして、短期的な利益を追求するビジネス全般を「貧困ビジネス」と呼ぶことにしたいと思います。
この定義だと普通に健全な経済活動をも包むかなり広い概念になると思うのですが、これらを一概にネガティブな視点で捉えて、ビジネスの存在自体を問題視する本書の傾向には違和感が残ります。

最も良くないのが、
 カビなどが生えて食用には使えないはずの「事故米」が学校の給食やお酒などに使われていたことが明らかとなっており、現状の検査体制は必ずしも万全といえず、今後は検査体制の強化が望まれます。
 今後は、個室ビデオ店やネットカフェ、カラオケ店、マンガ喫茶といった個室型店舗の業態について、個別店舗の営業実態を明らかにするとともに、なんらかの規制をかけて、安全面での行政指導を徹底していくことが不可欠といえるでしょう。
 筆者自身は、商品の安全性の問題について一番大きな責任があるのは政府だと考えています。
このように、お上に何とかしてもらうことばかりを訴えている点です。
これではむしろ逆効果ではないかと。お上が「安全、安心」のためという大義名分を振りかざして余計な規制強化ばかりするから、この国の経済活動の効率が阻害され、あらゆるモノやサービスがどんどん高コストになり、その結果として低コストな生活を選択する自由が奪われ、貧困者はますます貧困になるのです。

『「知の衰退」からいかに脱出するか』より、大前研一氏の言葉を再度引用しておきます。
 こうしたことを考え合わせると、日本の消費者は ”自分で考える” ということを放棄し、安全をすべて他人任せにしているということである。さらに言えば完全に「お上頼み」にしてしまい、その政府は「規制は任せろ」とばかりに、消費者庁の設置まで突き進んでしまうのだ。これは消費者団体と弁護士を喜ばせるだけの組織である。
 しかしそれが、どんなに「コスト高」を招くか考えたことがあるのだろうか?



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