2010年07月18日

『節約の王道』 林 望(著)



本書の要約として最適な記述が後書きの中にあります。
 ほんとうに、こういう生活は合理的なのか、理性的で文化的なのであるか、果たしてどこか間違っているところはないのか、自分の身の丈にあった生活をしているのか、無駄なことに無用の力や金を使っていないのか。そういうふうに無限に自省し、直視し、そして宜しからざるところあらば、悪しきは廃するに躊躇せず、宜しく改むるに逡巡せず、それが言ってみれば節約の王道である。直視したならば、そこからは、応戦しなくてはいけないということである。すなわち節約は、ちょこちょこチマチマとしたノウハウの謂ではなくて、もっと生活全体、あるいは生き方そのものについての自省的思惟でなくてはならぬ。
 その意味で、この本は、節約を説く本ではあるけれど、形而下的なノウハウを説く本ではない。
つまり、著者が実践している節約の手法を紹介しながら、自分自身の価値観や人生観を語るという構成になっています。そうとは知らずに読んでしまい、個々のやり方が自分の役に立たないとか、著者の価値観など聞きたくないと感じた人が、アマゾンのレビューで低評価をつけているんじゃないかと思います。

まず、共感したポイントを抜粋します。
 私は「見栄を張るためにお金を使う」というのが大嫌いです。
 私がお金と同時に節約すべきだと思うのは時間です。
 お金は「天下の回りもの」で循環するものですが、人生は有限。お金はいつか取り返せることがあっても、時間の浪費は二度と取り戻すことはできません。
プレゼントはしない・もらわない
派手な儀式ほど愚かなものはない
男も女も関係なく、一人の人間としてきちんと自立しているべきだ
洋服は流行に関係のないものを着る。これがもっとも聡明にして被服費の無駄を省けるやりかただと思います。
お金の使い方で、もっとも大切なのは自分の身の丈を知るということです
何にどれだけお金を使うかは、その人の収入や価値観、人生観によって変わってきます。家計のハウツー本などを見ると、娯楽費や食費など諸費用の割合とその額をあらかじめきっちりと決めておいて、その範囲内に収めるというやりかたが載っていますが、私はそういう考えは持ちません。


次は同意できなかったポイントとその理由です。
家計簿はつけない
自分の生活コストを把握するために必要です。

小銭入れは持ち歩かない
(中略)
 例えば、コンビニで買い物をして8円のおつりをもらったとします。そうしたら、そういうごく少額の半端なコインは、みんなレジのそばに置いてあるユニセフなどの募金箱に入れてしまうのです。大体、50円玉以下のものは、そういうものにすべて入れてしまって、ポケットの中は常に100円玉と500円玉だけにしておく。
節約派の読者からは、「そもそもコンビニで買い物をしてはいけない!」というツッコミが入る箇所でしょうね。
そこは置いといて、10円未満ならともかく、100円未満切り捨てとはかなりの太っ腹です。私は1円のお釣りでも募金などせず財布に入れます。財布の中に存在する1円玉が4枚以下になるように、端数の支払いを工夫すれば、財布の中が小銭だらけになることはありません。

 人間とは愚かなもので、10万、20万と手元にお金があると、ついつい衝動買いをして使ってしまいます。
そういう人は元から金銭感覚がおかしいだけでしょう。

どういうわけか不思議なもので、一度一万円札を崩してしまうと、あとはもう、あっという間に使ってしまう。
いえ、そんなことはありません。
一万円札1枚と、千円札10枚の価値が違って見えてしまう人は要注意です。あらゆる場面で色々と非合理的な意思決定をやらかしているおそれがあります。

 私は投資の類というのは一切やらないと決めています。
(中略)
 そもそもお金の管理で大切なのは、いかに確実に運用するかということだと思っているので、常に安全で確かなことしかやるつもりはありません。
このようなポリシーで貯金のみの運用だそうです。
でも、貯金が本当に「常に安全で確かなこと」なのでしょうか?
リスクの程度が違うだけで、貯金も投資の一種であることに変わりはなく、貯金のみの運用は、すべての卵をひとつの籠に盛っている状態にほかなりません。その籠は他の籠よりも大きくて安定しており、相対的に安全性が高いというだけのことで。

保険料は節約しない
(中略)
必ず医療保険なり生命保険なりを十分に掛けておくべきだと思います。
うーん、よりによって一番要らない保険を推奨しちゃってますね。
著者ほどのお金持ちであればなおさら不要のはずですが。

「車は安全じゃないでしょう」と言う人がいるかもしれませんが、自分で運転している限りは、自分でコントロールしていくらでも安全に行くことができます。私はすこぶる安全運転なので何の問題もありません。
 そこへいくと、飛行機というのは一か八かです。自分では気をつけようがない。墜落する確率はほぼゼロに近いなどと言いますが、それでも、飛行機に乗るときは誰もが命の危険を感じるはずです。
これ、典型的な「安全」と「安心」の混同です。こんなにわかりやすい例は初めて見ました。
自分でコントロールできるか否かとは関係なく、飛行機のほうが車の何十倍も安全です。
関連記事: 『リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理』


ところで、著者はかなりの高所得者のようです。
1年半落ち以内の中古車という条件で
ベンツのCクラスのC200、C240などが年収の一ヶ月相当で買える
という記述から、ざっと年収4000万円は下らないと推定できます。庶民の年収とは文字通り桁が違いますね。

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2010年07月12日

『政権交代バブル』 竹中 平蔵 (著)

参院選終わりましたね。
政治に期待するだけ無駄かとも思いつつ、投票してきました。
どこに入れたかは、政治ポジションテストを見てもらえばだいたい察しがつくと思います。



2009年の政権交代直後に書かれた本です。
民主党よ! 公約不履行の覚悟を持て
竹中さんの声が届いたのかどうかわかりませんが、実際、民主党政権は公約不履行のオンパレードです。

君子は豹変せねばならない―――それも早いタイミングで豹変しなければ、かえって国民の信頼を失います。
いや、どんなタイミングであれ豹変する君子を信頼しろというのは無理な話です。
民主党に限らず、選挙の時だけ大風呂敷を広げておいて、当選してしまえばこっちのもの、みたいな政治家が多すぎるのではないでしょうか。公約を信じて一票を投じるに値する真っ当な政治家、政党がなかなか見つからないので、多くの国民は政治不信に陥っています。これだけ公約不履行が繰り返されたら、誰も信じられなくて選挙権を行使しない有権者がいるのも無理はないでしょう。

「官僚社会主義」の台頭
(中略)
2009年6月には経営危機の日本航空を支援するため、日本政策投資銀行の融資に政府保証を付けることが決まりました。政府保証とは、社会主義的な発想そのものです。しかも今回のケースには何の法的根拠もないのです。官僚が恣意的な介入をしている典型であり、自分たちの言いなりになる企業だけをえこひいき的に保護しようとしています。
このような官僚主導の政治は一刻も早くやめさせる必要があり、この点で民主党の公約自体は間違っていなかったと思います。

消費税というと、もっぱら「社会保障に使う」という印象が強いのですが、これは財務省のキャンペーンの影響で作られたイメージです。社会保障の財源にしておくかぎり、消費税を国税のままにしておける。財務省が押さえておけるという目論見です。
確かに無意識のうちにそのようなイメージを刷り込まれていますね。恐ろしいことです。

そもそもおカネには、一枚一枚を見分ける「色」はついていません。道路のような特定財源にしない限り、「消費税相当額」を社会保障に使うことはできても、「消費税を社会保障に使う」という言い方はありえないのです。
 社会保障は、もともと所得再配分の役割を担っています。所得の再配分にふさわしい税金とは、累進課税できる所得税です。その意味でも、社会保障目的には所得税を活用すべきではないでしょうか。国民から等しく取る消費税は、所得の再配分にはふさわしくないのです。
なるほど、その通りです。
最終的には所得の再配分機能は所得税に集約して、それ以外の負担は均一にするのがベストですね。徴税コストが激減する上、負の所得税を導入すれば生活保護さえ要らなくなると。

このようにいくらでもコスト削減の余地が残っているのに、二大政党は増税路線を突き進もうとしているのですから困ったものです。

もはや誰にとってもグローバリゼーションを避けることはできません。選ぶ・選ばないを選択できる時代ではなく、厳然たる事実として受け入れるしかないのです。
同感です。

SAABというスウェーデンの自動車会社が破綻寸前の状況に陥り、政府に救済を求めました。イメージとしては救いそうでしょう。しかし、実際は違いました。スウェーデン政府は救済を拒んだのです。そんな弱い企業を生かしておいたら、グローバル化が進むなか自国の経済が弱くなってしまうからです。
 スウェーデンのように高水準の社会保障をやろうと思えば思うほど、経済は強くなければならない。基本的に政府は、救済に対して消極的です。そのためスウェーデンでは、中小企業は淘汰されて数が少なく、競争力の高い大企業、中堅企業が経済の中心を担っているのです。
これは知りませんでした。経済政策的には日本よりアメリカに近い国なんですね。
優れた経済政策は大いに真似れば良いのですが、スウェーデンのような大きな政府を目指すのは反対です。

日本の法人税率は、海外と比べてきわめて高い。事業税率と住民税率を含めた実効税率は約40%に達します。一方で、アジアの多くの国々は20%か、それ以下。これでは競争になりません。
 こういうと、すぐに「儲けている企業を優遇するのか」という批判が出てきます。
(中略)
しかし、儲けている企業こそ大事にしなければなりません。儲かっていない企業を大事にするのは、資源の非効率な分配を温存するだけです。イギリスのチャーチルは「損をしている企業こそ悪徳企業である」と語りました。
(中略)
にもかかわらず、麻生政権は政策投資銀行を使って潰れそうな大企業を救おうとしました。このような企業は経営責任を厳しく問い、強い経営をしている他の企業に吸収させるべきなのです。
そうですね。
日本は資本主義の国なのに、なぜか儲けている人や企業ほどバッシングされる傾向があるのが、とても不健全だと思います。

参考記事:
政権交代バブル: 投資ねばねば日記
乙川乙彦の投資日記: 竹中平蔵(2009.11)『政権交代バブル』(Voice select) PHP 研究所

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