2017年11月30日

「PCは知人から借りられる」判決への批判が的外れな件

ツイッターより。

これがたまたま目に入ったのですがほんの一例で、類似の批判ツイートはいくらでも見つかります。

では判決を伝えるニュース記事を見てみましょう。
 生活保護受給者のパソコン購入費は「自立更生の出費」と言えるのか――。自治体による生活保護費の返還請求をめぐる訴訟で、東京地裁は「パソコンは知人に借りることができる」として、自立更生の費用とは認めない…
www.asahi.com
判決によると、原告は東京都東村山市で一人暮らしをしている女性で、2011年11月に甲状腺の手術を受けた後、仕事のあてがなくなり12年2月に生活保護の受給決定を受けた。同年5月〜13年5月まで、計122万円を受給した。

 だが、女性が12年3月から半年あまり派遣会社で働き、収入を得たことが判明。同市は約73万円について返還を求めた。女性側はパソコンの購入費は「自立更生の出費」にあたると主張。「求職活動や収入申告に必要だった」として返還は不要と訴えた。
記事の中身をちゃんと読めば、返還請求を受けた73万円は、収入があったのに申告せずに不正受給した分であることがわかります。本来なら全額返すのは当然の事例で、原告側がせめてPC代(たとえば10万円とする)だけは除外して63万円返還で勘弁してくれとゴネている訴訟なわけです。

この状況で原告勝訴ってあり得ないでしょう。東京地裁の裁判官は何ら間違った判断をしていないと思います。

訴訟の内容をろくに読まずに、記事の見出しだけ見て誤解している人が相当数いると推測します。少なくともこのツイート主は「生活保護費でPC購入したらその金を返還させた」と書いているので、生活保護費でPCを買うことを禁じるルールがあるとでも勘違いしていることは間違いなさそうです。

朝日新聞も、この内容の記事に「PCは人から借りられる」発言を殊更強調する見出しを付けてしまうあたり、なんとも残念なバイアスがかかったメディアだと思います。9月の判決を今頃記事にしているのも不自然ですし、何か胡散臭いものを感じます。

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2017年11月25日

『無敵の思考』 ひろゆき (著)



こちらのブログで紹介されていた本です。彼の人生観に共感したので読んでみました。

その「できるだけ楽しく暮らす」ためのルールが21個列挙された本なのですが、正直、個別に共感できるものはそんなに多くはなかったです。そのうちの一つを挙げるとすればここでしょうか。

p.69
自分が快楽を得るためにお金が必要な人は、人生のランニングコストが非常に高くなります。
(中略)
 そこの欲と向き合うことをせずに、ただ欲のままにそれを満たし続けるのは、不幸な結末しか待っていません。
つまり「足るを知る」ことができるか否かですよね。有限な人生の中で無限の欲望を満たすことはできませんから、どこかに線を引いて諦めることになります。他人から見てランニングコストが高くても、自分が引いた線の内側に収まっていればそれでいいと思います。

p.149
今の時代は、「ここまでお金を貯めたら労働者としての生活は卒業して、ゆっくり生活できる」というラインが見えなくなります。
そのラインがはっきり見えていた時代の方が例外だったのだと思います。私の親世代はその例外にあたり、叔父たちも含め、きっちり60歳で定年退職して年金と資産を使いながらゆっくり生活している人が多いですね。

しかし今の時代でも、人間の寿命と自分の生活コストからするとだいたいこのへんにラインがありそうだなというのは計算できるので、ある程度稼いだらさっさとリタイアする人生も不可能ではありません。

暗い話になりましたが、安心できるまでお金を稼ぐことより、今の生活で満足できるように考え方をシフトするほうが手っ取り早いということがわかっていただけたのではないかと思います。
早期リタイアを志向するような人からすると常識とも言える考え方です。何よりも「安心」が第一と考える人は、早期リタイアなんて生き方は選択しないほうがいいでしょう。

p.206
先進国で生まれた人は、だんだん経済的に息苦しくなることが、おいらから見ると自明なので、「経済と自分の幸せを切り離せるか?」ってのが、大事なのかなぁ……、と思っています。
本当に経済と切り離してしまったら現代人は生きることさえ困難になりますよ。経済と自分の幸せが密接につながっていること自体は問題ではありません。ひろゆき氏が言いたかったのは、できるだけお金を多く稼いで多く使うライフスタイルに幸福を見出す人は不利だ、って事じゃないかと思います。

なぜそうなるかと言うと、お金を稼げば稼ぐほど、使えば使うほどに罰金が重くなるシステムだからです。参考ツイート:

こんな世の中だと、少なく稼いで少なく使うライフスタイルで十分幸せだと思える人のほうが有利です。

p.207
とはいえ、この本は編集者の種岡健さんに、過去に書いたことや話したことをまとめていただいただけなので、ちゃんと自分で書いたのは、「おわりに」だけなんですけどね。
なんと!
まさに副題どおりの「コスパ最強」な出版方法を実践したことになりますね…。

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2017年11月20日

『預金封鎖に備えよ』 小黒一正 (著)



刺激的なタイトルとは裏腹に、凡庸な内容の本でした。

日本政府の財政破綻は最早避けられない前提のもとで、個人としてはどういった資産防衛策が有効かという話に興味があったのに、政府や日銀目線の金融政策の話が本書の大部分を占めており、期待外れに終わりました。

最後の最後に「資産防衛の決め手は『仮想通貨』か」という見出しのセクションがあり、わずか14ページの中でそれらしい事に触れてはいたものの、ごくありふれた内容でした。

結局、著者は個人レベルでできる資産防衛なんかにはほとんど興味がなくて、マクロな視点で国家の財政再建の方法論を語りたい人なんだと思います。財務省にも勤務した経験のある経済学者だからそういう視点になるのはやむを得ませんが、だったらこんな思わせぶりなタイトルは付けないでほしかったですね。

p.242-243
富裕層ではない多くの若者世代や子育て世代にとって、資産防衛を考えることはあまり意味がありません。しかしながら、今後、いざ財政危機に直面したとき、もっとも被害を受けるのは彼らです。
 では座して死を待つしかないのかと言えば、そうでもないのです。今のうちに備えるべきことは、大きく分けて二つあります。
 一つは、自分に投資をして能力を高めておくこと。(中略)
 そしてもう一つは、しっかり財政再建できるような方向にコミットすることです。社会保障は厚いほうがいいし、税金は安いほうがいい。しかしそれでは、財政が破綻するのは明らかです。そして破綻に至れば、資産も人生設計も大きく毀損するだけです。早くそのことに気づいて、国の選択を注視する必要があります。
語り口は丁寧ですが、要するに「資産防衛なんて無意味な抵抗はせず、みんなで痛みを分かち合って政府の財政再建に協力しましょう」と言ってるだけに見えます。冗談じゃないですね。本書のタイトル『預金封鎖に備えよ』とは、「預金封鎖(を一例とする政府の財政再建策)の痛みを覚悟せよ」という意味だったのかと、ここまで読んでやっとわかった気がします。

財政が「破綻に至れば、資産も人生設計も大きく毀損するだけ」と脅していますが、それは政府に強く依存するポートフォリオや人生設計を選択してきたからそうなるのであって、政府への依存度を十分に下げることができれば、無傷とは言いませんが「大きく毀損」することは避けられるはずです。
参考ツイート:

p.244
限りなく絶望的ではありますが、まだ財政再建の道があるとするならば、それを放棄する手はありません。
著者本人も絶望的だと認識しているのに、まだ望みはあるから覚悟せよとは、酷すぎる話ではありませんか。財政を死守するために終わりの見えない増税に苦しんだ先に、一体どんな希望があると言うのでしょう。このような精神論が蔓延っている状況は終戦直前の日本とそっくりに見えます。

「限りなく絶望的」なら、財政再建など潔く放棄してさっさと破産処理してしまいましょう。

関連記事:
以前から不思議に思っていることの一つが、自らドケチを名乗るmushoku2006さんが消費税増税を支持していること。ドケチにあるまじき行為。(笑) 資産課税のような後出しジャンケンが許されないことについては意見が一致するんですけどね。 過去の行為についての税金は勘弁して欲しい 2 : 年間生活費100万円! 36歳からのドケチリタイア日記:…
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マネーボイスの記事より。衰退国家の日本で最後に生き残るのは「一握りの投資家」だけと知れ=鈴木傾城 | …
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2017年11月15日

『ブロックチェーン・レボリューション』 ドン・タプスコット,‎ アレックス・タプスコット(著),‎ 高橋 璃子(翻訳) その2



『WIRED』日本版編集長、若林恵さんによる巻末の解説より。

p.362-363
ブロックチェーンって、どっちかというと、というか日本では完全にフィンテックの文脈に乗っちゃってて、なんとなくつまんないなあ、って思ってたんですよ。「ブロックチェーンって、そういうことなんだっけ」っていう疑問がありまして。
同感。
フィンテックはファイナンス・テクノロジーの略なので、その守備範囲は金融に限定されますが、ブロックチェーンは金融以外にも広く使える技術です。あと、フィンテックの中にはブロックチェーンと無関係のものも多くあります。たとえば国際送金サービスを提供する TransferWise は代表的なフィンテック企業ですが、彼らの送金システムは今のところブロックチェーンを使っていません。

p.366
いずれにせよ、「お金の民主化」というのは、普通に考えて、近代世界の構成上あるまじき事態であって、インターネットがそれを可能にしてしまうのが明らかである以上、ぼくらは、近代世界を形作ってきたシステムそのものがひっくり返り得る、その歴史的転換のとば口に立っているのかも、ということが、まあその特集を通じて、見えてきちゃったんですね。
お金の民主化は「近代世界の構成上あるまじき事態」とおっしゃいますが、トップダウンに為政者目線で捉えると不都合だという話でしかなく、近代世界を形作っているのは国家というシステムよりも前に、まず最小単位である人間です。人間一人ひとりがフラットな視点で眺めるならば、お金の民主化は大変好ましいことだと思います。

p.368
──ビットコインはあまり面白くないっていうのはどうしてなんですかね。

うーん。ここは説明しようとすると若干矛盾がありそうで難しいところなんですけど、ビットコイン信奉者にありがちな極端なリバタリアニズムは問題提起としては面白いんですけど、やっぱりちょっと現実離れしているところがあって、気分的には若干苦手なんですね。
いや、暗号通貨の何が面白いかって、ガチガチの中央集権制である国家管理通貨を使わざるを得ない現状から、人々を解放しようとしている事が一番でしょう。その最大の利点を抜きにして暗号通貨を語っても、何も面白くありません。

とはいえ、ビジネス界隈でフィンテックの名のもとで語られるビットコインやブロックチェーンの話は、それはそれで、なんというか利便と利得の話でしかないように見えて、そっちはそっちでもっとつまらないなあ、と。
これは同感。
利便と利得の追求自体が悪いわけではないのですが、特に日本国内では金融機関の既得権温存が前提になっていて、利用者の利便そっちのけのサービスしか出てこないのではないかと危惧しています。

関連記事:
現代ビジネスの記事より。満員の「仮想通貨セミナー」で明かされたビットコインの光と闇(伊藤 博敏)…
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2017年11月10日

『ブロックチェーン・レボリューション』 ドン・タプスコット,‎ アレックス・タプスコット(著),‎ 高橋 璃子(翻訳) その1



最近読んだ本です。
副題は『ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか』。

以前読んだ『ブロックチェーン革命』と同様、楽観的な未来予想図を描いています。

p.195
ピケティは資本主義を問題にしているけれど、悪いのは資本主義そのものではない。資本主義のしくみは、うまく使えば、富と豊かさを生むためのすばらしい道具になる。問題は、つぎはぎだらけの金融システムのせいで、そのメリットにふれることすらできない人が多すぎるということだ。
同意。

銀行を中心とする既存の金融システムがお粗末過ぎるのです。なぜそんなお粗末なものが21世紀まで生き残っているのかと言えば、各国政府が金融業をガチガチに規制、統制してきたせいでサービス提供の自由が著しく制約される上に、参入障壁も高くてまともな競争が生まれなかったからです。

参考ツイート:

p.197
「アフリカの多くの国では固定電話が整備されていませんでしたが、携帯電話がこれを解決しました。一足飛びに携帯の時代になったんです。ブロックチェーンはこれと同じ効果を金融の世界にもたらすでしょう」
既存の金融システムが深く根を下ろしている先進国よりも、銀行口座すら持てない人々が溢れている金融後進国の方が未来を先取りする可能性も見えてきますね。先進国でも今後、規制の上にあぐらをかいて現状維持しか考えていない金融機関は、どんどん先細りになっていくと思います。

参考ツイート:

(つづく)

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2017年11月05日

リタイア後の支出レベルと現役時代の所得は無関係

橘玲公式サイトより。
イギリスの経済学者2人が書いた『ライフシフト』(東洋経済新報社)で、高齢化時代の資金計画が試算されている。それによると、毎年所得の10%を貯蓄して(けっこう大変だ)、老後の生活資金を最終所得の50%確保しようとするなら(かなりギリギリの生活だ)、平均寿命85歳でも70代前半まで働きつづけなくてはならない。平均寿命が100歳になれば条件はさらに厳しく、80代まで働きつづけるか、それが無理なら引退時の所得の30%という貧困生活に耐えるしかない。
ここを読んだ時、かなり違和感がありました。

まず、「毎年所得の10%を貯蓄」することが「けっこう大変」なんですか?
この文脈での「所得」とは税法上のそれではなく年収と同義だと解釈したとしても、たとえば年収400万円なら40万円です。毎年40万円すら使わずに取っておくことが大変だと感じる人は、かなりの浪費体質ではないでしょうか。

以前読んだ本では、現役時代の貯蓄が年収*年齢÷10に満たない人は「蓄財劣等生」と言われています。関連記事:
アメリカのミリオネアのほとんどは、高級住宅街には住んでなくて、高級車にも乗ってなくて、高価なスーツや腕時計も身に着けていない、ご…
koutou-yumin.seesaa.net
たとえば22歳から42歳までの20年間毎年400万円の収入がある人の場合、1680万円の貯蓄が目標になります。橘氏が「けっこう大変」と言う10%ルールだと20年間で800万円。こんなヌルい目標では完全に蓄財劣等生になってしまいます。


次に、「老後の生活資金を最終所得の50%確保」だと「ギリギリの生活」になり、「引退時の所得の30%」だと「貧困生活」になるという、その根拠が不明です。「所得」ではなく「支出」を現役時代の50%や30%に切り詰めるという話ならわかりますよ。しかし橘氏や『ライフシフト』という本が基準にしているのは、なぜか収入の方なんですよね。そんな基準は、収入と支出が綺麗に比例している人でなければ使えないと思うのですが…。

私の考えだと、リタイア後の支出は資産残高と時間残高のバランスで決まるだけです。今後の生存可能年数を計算するのに過去の支出を参考にすることはありますが、過去の収入というパラメーターの出番はどこにもありません。

リタイア直前にどれだけ高所得なAさんでも、生活コストが高すぎて余命の長さの割に蓄えた資産が少なければ、リタイア後の支出はそれに見合ったものに下げる以外にありません。そんな「貧困生活」は嫌だと言うなら橘氏の言うように70代まで、下手をすると死ぬまでリタイアできない人生になるだけのことです。(むしろそういう人生を望んでいる人も少なくないことは知っています。)

対照的に、低所得でも蓄財優等生のBさんなら、リタイアが原因で生活が貧しくなる可能性は低くなります。それどころか、これ以上の蓄財は不要だと判断した時点で早期リタイアできる可能性も見えてきます。私はこちらの人生を望み、実践しています。

関連記事:
ITTINさんのブログにこんな記事がありました。 独身一人暮らし女だからこれからどうやって生き抜いていくか考えるブログ 「ボーナスの使い道」に違和感:「現在の総資産」から、何をしようか、いつ行おうか考える。 そのように考えると、消費するとしてもわざわざボーナスの支給月に合わせて消費する必要がありません。 というわけで、毎回ボー…
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