2010年08月08日

『今ウェブは退化中ですが、何か? クリック無間地獄に落ちた人々』 中川 淳一郎 (著)



『ウェブはバカと暇人のもの』と同じような内容なので、読むならどちらか一方だけで十分でしょう。

 ネットの良い点は、充分過ぎるほど分かっている。それについては、多くの人がネット上や書籍で説明しており、かなりの部分で私も同意する。
 だから、私はそれを踏まえた上で、あえてネガティブな面に光を当てる。いつまでも隠蔽し続けていては、ロクなことはない。
本書で多くのページを割いて事細かに取り上げられているネット上のネガティブな事件簿は、別に「隠蔽」されているわけでも何でもなく、知ろうと思えばいつでも知ることができるものです。多くの人にとっては何の興味もない事柄であるが故に、スルーされているだけのことで。

どんな便利な道具を使おうが、凡庸な人間が凡庸であることに、バカがバカのままであることに変わりはない。
まあこれはその通りですね。

世の中には絶対に分かり合えない人がいる
これもその通り。
この事実を簡単に知ることができるのも、ネットという道具のおかげです。
梅田望夫氏の
「ウェブ上での人体実験=すべてのウェブ上での反応・感想を読むこと。これはもう終わりにしてもいいだろう。30,000以上、読んだから」
という発言も、分かり合えないことを身を持って知ったから出てきたのだと思います。

人を疲弊させるネットの現場の仕事
(中略)
ニュースの編集者をやってきた間、休んだ日数は以下の通りである。
2006年: 0日
2007年: 3日
2008年: 9日
2009年: 6日
お疲れ様としか言いようがないです。

 しかも、勝手な要求を突きつけてくるのは、かなりの割合で、一切カネを払っていない暇なネットユーザーである! こんなおかしなビジネスモデルがあるか! ここまで人間一人の努力が報われない世界があるか! 私はそう思うのである。
ネットユーザーの多くはカネを払っていますけどね、プロバイダーに。
というより、ユーザーが一切カネを払わないのはネットに始まったことではなく、テレビという旧来のビジネスモデルだって同じことでは?

自分が好きでやっているビジネスが苦労の割に儲からないのを、ユーザーのせいにしてはいけないと思います。

 ネットとは、失うものを持つ人が失うもののない人の相手をさせられる装置だ、と私は述べた。同時にネットは、「報われぬ真面目な人」を生み出す装置でもある。真面目な人ほど、叩きやクレームへの対応を検討するのに時間を費やし、心を悩ませるのに時間を費やし、悩んだ末に暗澹たる気持ちになる。そして何も報いはない。
なるほど、これはかなり当たっている気がします。
でも、この後に、
 ネット礼賛者やネット教信者、ネットに巣くう暇人ども、お前らにはそういうことが分かっているのか?

 分かってやっているのであればやめろ。

 マジでやめろ。
こんな押し付けがましいことを言われたら、丁重にお断りしたいですね。

もし実害を及ぼすほどの叩きやクレームなどがあれば、法に則って粛々と罰を与えればよく、それが何よりの抑止力になります。

ネットを礼賛したい人が礼賛して、ネット教(というものが仮に存在するとして)を信仰したい人が信仰して、いったい何が問題なのでしょうか? そのような自由を奪う権利は誰にもありません。

溢れんばかりにあるネットの情報――これもまあ良いことだ。だが、もともと書籍や雑誌をすべて読むことさえ不可能で、世間はすでに情報過多の状況にあった。そこにゴミのような情報をさらに増やしても大した意味はない。
書籍や雑誌と違って、ネットの情報は検索可能であるという重要な事実を、わざと無視した発言ですね。
それから、その情報がゴミであるかどうかは個々のユーザーごとに違うので、「ゴミのような情報を流すな」と叫ぶことに、それこそ大した意味はないでしょう。
 私は文章を書くことによって生計を立てているが、仕事でもないのに匿名であれこれ文章を書き、議論したり誰かに反論しまくったりしている人のインセンティブがどこにあるのか、よく分からないのである。
なんか嫌味を言われているような気分ですが(笑)、アフィリエイト目的の場合を除いて、個人のブログは何らかのインセンティブがあるからやっているわけではないような気がしますね。ネットに限らず、そもそも人が趣味でやっていることはすべて、同じことをビジネスでやっている人には理解できないものです。

著者も仕事のことなど一切忘れて、単なるユーザーとしてネットと接することができたなら、もっと違った意見になっていたかもしれませんね。

参考記事:
ウェブは今やほとんど普通の「世間」なのだろう - 評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」

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posted by 遊民 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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