2011年11月28日

『やりくり上手な賢い夫婦、お金が残らない残念な夫婦 ~なぜ、夫婦で年収800万でもお金が足りなくなるのか?』 中桐 啓貴 (著)  その1



タイトルは節約術の本にも見えますが、中身は違っていました。アマゾンの辛口レビューに共感します。

FPである著者は、
一概に経済合理性だけを追求したアドバイスをすることが、いかに無意味かを痛感しました。
とのことです。
例えば、たばこを吸う人にとっては、(中略)
禁煙したら30年間で1340万円貯まる事実などは、次の日本の首相が誰になるかと同じようにどうでもいいことなのです。我慢して貯める1340万円よりも、たばこに高い価値を置いているからこそ吸っているのであって、それを他人がムダだと決めつけることはできません。
たしかに一理あります。価値観の相対性ですね。
ですが、経済合理的なアドバイスが無意味、の例になっていないような気もします。この例のように「喫煙という習慣の効用がそのコストを上回っているから禁煙しない」と判断するならば、それはそれなりに経済合理的な判断と言えるのではないかと。

まあ実際には、喫煙の本当のコストなど知らないまま、目先の快楽のために惰性で悪習を続ける喫煙者がほとんどでしょう。そのような人にコストを知らしめた上で、それでも効用のほうが上回るのかどうかを経済合理的に考えさせることは、十分に意味のあることだと思います。

価値観に基づくファイナンシャル・プランニングをみなさんに実行していただきたい理由は3つ。
1. ゴールを設定していない人生は無意味であるから
2. 価値観を大切にすることによって、自由になれるから
3. プランニングをすれば、必ずゴールに到達できるから
価値観に基づくのは大いに結構なことですけど、これらの理由はこじつけっぽくて違和感があります。特に1と3は違うと思います。

p.64〜
1 新築マンションは買うな
というセクションがありますが、中身は「ローンで」買うなということしか書いていないようです。見出しが言葉足らずで誤解を招きます。

不動産というのは株式のように市場がありませんので、相対取引が主になります。
すると、ぜったい儲かるような物件は水面下で取引されるので、広告等で表に出てきている物件は基本的に儲からないと考えていいかもしれません。
その通りだと思います。市場メカニズムが働かない相対取引はできるだけ避けたいところです。
ここまでわかっていながら、
第4章 不動産投資でいろいろな夢への扉を開く
にページを割いており、不動産投資に肯定的な内容になっているのが不思議に感じました。

1 心ときめく不労所得
(中略)
一番わかりやすい不労所得は何かというと、利子ですね。といっても、現在は超低金利の時代。不労所得には違いないですが、1000万円銀行に預けておいても1年間につく利息が1万円
このように名目金利だけに着目し、利息に「不労所得」というラベルを貼って何か特別な収入のように扱ってしまうのは、よくある間違いだと思います。

たとえば、超高金利の時代が到来して1000万円の銀行預金が100万円の利息を生むとしたらどうでしょうか? 税引き後80万円の不労所得だと言って喜んでしまう単純な人は、大事な何かを忘れています。

銀行預金の金利が10%のとき、たとえばインフレ率が9%だったら?
1000万円の銀行預金は1年後に1080万円になっているはずです(ここで1000万円の元本と80万円の利息に分けて考えることは無意味です)。しかしその購買力は1年前の物価に換算して990万円ほどしかありません。実質的には不労所得どころか不労損失が発生していることになります。

因みに、この例で実質金利がプラスなのに購買力がマイナスになるのは、インカムゲインにかかる税金のせいです。利息や配当、分配金などのインカムゲインが多いことをありがたがってはいけない理由がおわかりいただけるかと思います。

(つづく)

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