2015年09月18日

30代早期リタイアのために「全力リスク運用」は必要か?

さいもんさんのブログより。
超早期リタイアなら全力リスク運用が基本│ひとり配当金生活
30歳代での超早期リタイアを目指すなら資産運用は全力でリスクを取るのが基本です。
30代と言っても30歳と39歳ではだいぶ違いますね。
私のイメージでは30歳ならまだ超を付けてもいいけど、35歳を超えてくると怪しくなってきて、39歳だったら普通の早期リタイアだと思います。
ついでに、50代に入ってからだともう「早期」ですらないような気が。それぐらい人生は短く若い時間は貴重なんです。おっと話が逸れました。

最初に記事のタイトルを拝見したときは、
全力リスク運用=リスク資産100%のポートフォリオを持つ
という意味かなと思いました。

それならわかります。本人のリスク許容度次第では無謀な選択にもなり得るものの、39歳で早期リタイアを狙うなら呑気に無リスク資産なんか組み入れている場合ではないだろうと。
因みに現代ポートフォリオ理論では、リターンとリスクの調整はリスク資産(市場ポートフォリオ)と無リスク資産の比率を変えることで行います。期待リターンを最大化するには、それを100:0にすればいいだけです。

ところが、さいもんさんの記事の中身を読んでいくと、どうも全然違ってました(汗
その結果資産を失ったらどうするか?どうするも何も、また金を貯めて最初からやり直すしか無いのですが、
株式投資で成功した人の多くは一回は全財産を失うような経験をしています。
こんな物騒な話が次々と出てくるではありませんか…。
さいもんさんが言うところの「全力リスク運用」とは、全財産を失うリスクを取るという意味のようです。これには驚きを隠せません。

ただしわずかでも成功の確率を高めたのは、資産10倍増を最初から狙っていたのが大きいと思います。
資産10倍増とかサラリと書かれてますが、プラス900%です。これを何年間で? 10年かけていいのだとしても年平均25%です。正直、狙って取れるようなリターンじゃないと思います。

おそらく、さいもんさんのイメージする「超早期リタイア」達成や「株式投資で成功」の基準が、私に比べて遥かに高いレベルなんでしょう。目標とする資産額もリタイア後の支出レベルも。

なぜ全財産を失うリスクを冒してまで超ハイリターンを狙う動機があるのでしょうか。隠れた前提として、収入と支出の差額によって自動的に積み上がっていく資産よりも遥かに速いスピードで資産を増やしていかないと目標に到達しない、という事情があるのではないかと推察します。目標が身の丈に合っていないという意味でもあり、逆に言えば、目標の割に収入が少なすぎるand/or支出が多すぎるという意味でもあります。

因みに私の独自基準では、現在何歳であってもACRが平均余命を上回っていればリタイア可能です。極端な話、まだ30歳でも支出が寝太郎さんレベルなら1300万円で足りる計算になります。超早期リタイアだからと言って必ずしも莫大な資産が必要とは限らず、すべては本人の支出レベル次第なのです。30代でのリタイアを狙うなら、投資で一山当てるという発想よりも、支出レベルを下げる方がより確実な効果が期待できると思います。
関連記事:
『年収200万円からの貯金生活宣言』
分散投資で早期リタイアは不可能?

なんか既視感があると思ったら、こんなのもありましたね。
貧乏人はリスクを取らなければ金持ちになれない | 日刊SPA!
分散投資を考えるのは、1000万を超えてからの話。玉砕覚悟で資産10倍、20倍増を狙う姿勢が大切です。元手が無くなったらまた貯めて出直せばいいんです
いやいや、そんな無茶な。
この理屈だと、玉砕覚悟で全財産で宝くじを買うことだって正当化されません? 10倍20倍どころか、1本当たれば即3億円ですよ。

金持ちになる可能性が有るか無いかという二分法で単純思考してしまうと、このようにリスクや期待値を度外視したおかしな結論になることが多いと思います。

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2015年06月09日

住居の所有と賃貸の損得

最近、自分が住むための家は買う方が得か、それとも借りる方が得かについて考察する記事をよく見かけます。

「持家」と「賃貸」を比べると「持家」が得に決まってるよね。: 人は株のみで食べていけるか?
持ち家と賃貸、どちらが得か? | 自由になりたくて47歳で会社を辞めたらこうなった
「賃貸で一生家賃を払い続けても手元に何も残らない」は本当か? | Step to Next Life
賃貸と持ち家の生涯コストは同じはウソらしい | セミリタイア資金3000万を目指すブログ
2年毎に引っ越している私の賃貸 VS 持ち家への考え方。 | フクリの海外ETF長期投資ブログ

買うにしても借りるにしても、寝太郎さんが言うところの「超高級家屋」しかないのが、オーバースペックな国ニッポンの特徴ですからね。(関連記事: 『Bライフ―10万円で家を建てて生活する』 高村 友也 (著)
衣食住の中でも最も厄介なコストであることは確かです。結果的に生涯生活コストの多くを占めることになるので、特に早期リタイア志向の若い人にとっては、一体どちらが得なのかは気になるところでしょう。

私の場合は、早期リタイアなんてまだ眼中になかった20代の頃、今から思えば「何も考えてない」レベルの直感で35年ローンを組んでマンションを購入するという勇ましい行動に…。その後ローンは10年足らずで完済できたから良かったものの、マンションの価格は順調に右肩下がり。これまでのローン金利+含み損+固定資産税+管理費などの総コストを計算してみると、賃貸に住み続けていた場合と同程度になります。

しかし自分の場合はこうだったという過去のデータはただの結果論に過ぎないので、「所有も賃貸も結局損得は変わらない」などと結論付けるつもりはありません。

所有にも賃貸にも、それぞれ固有のリスクがあります。たとえば所有の場合は大地震や大津波などの災害リスク、賃貸の場合はインフレリスクなど。
所有と賃貸ではそれぞれどういう種類のリスクを負担するかが異なるだけで、どちらか一方を選びさえすればあとは何が起こっても安心、などということはありません。

損得についても、未来に発生する事象は予測できない以上、最終的にどちらが得になるかは「わからない」としか言えないでしょう。早期リタイアを目指す場合でも、それぞれのリスクとメリットを理解した上で、自分に合っていると思う方を選択すれば良いと思います。

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2015年05月20日

定期預金はインフレ対策になるか?

Kotaroさんのブログより。
インフレになって、「預金金利<物価上昇率」となると預金の元本が目減りする。だから「貯蓄から投資へ」といのは早計だ。
soutai40.com
インフレ対策として「1年ものの定期預金」はアリだと思う。
私も7年前に書いた記事では、それに近い考えでした。(関連記事: 預金のインフレ抵抗力
しかし最近は、定期預金を含む銀行預金を持つことが「インフレ対策」になるとは思っていません。

2015年5月現在は、アベノミクスの金融緩和で金利が低く抑えられているが、
ここ、預金がインフレ対策になるかどうか考える上では見逃せないポイントです。

銀行預金がインフレ対策として機能するためには、インフレ率が上がるとそれに追従して預金の金利も上昇しなければなりません。インフレ率が上昇しているのに預金金利が一向に上がらない現在のような状況だと、定期預金の実質金利はマイナスになります。

参考記事: 
預金と物価の関係です。 何度も書いているので、飽きちゃった方がいたらゴメンナサイ。 ここ数年分の預金利息と消費者物価をグラフにしました。 出典は、  ●日本銀行の統計データ検索より、   預金金利、 1年定期(1000万円以上と300万円未満)        10年定期(  〃      〃    )         普通預金、 それぞれの平均利息  ●総務省 統計局の 消費者物価指数より ====== 利息は、6年前の10年定期であっても1%もありませんね。最近はもう限りな...
tak-tak-world.txt-nifty.com


現在の実質マイナス金利は一時的な状況で、まもなく名目金利がインフレ率に追い付いてくるのでしょうか?
もしアベノミクスに「金融抑圧」という意図があるのだとすれば、そうとも言えないと思います。

参考記事: 
「資産運用では株価だけではなく為替も考慮しよう」において、金融抑圧について言及しました。詳細について質問がありました。個人の資産運用においても重要な問題です。金
matsunosuke.jp


この記事にあるように、金融抑圧を伴うインフレはスローモーションの国債デフォルトを可能にします。天文学的な借金を抱える日本政府が歳出削減にも増税にも行き詰まったとき、表面的には波風が立たない金融抑圧政策でじわじわ借金を減らしていこうと目論むのは、ごく自然なシナリオだと思います。年金給付もマクロ経済スライドで削減できるし、まさに一石二鳥。

そうすると、定期預金で長期運用した結果、30年かけて購買力が半分になっちゃいました〜、なんてことも普通にあり得る話ではないかと。30年でマイナス50%のリターンというのは、年率わずかマイナス2.3%で達成(と言うのも変ですが)可能な数字です。ゆでガエル作成のようなゆったりとした目減りなので、預金保有者が「大打撃」と認識するまでには長い時間がかかるはずです。

私はこのような思考経路を辿った結果、定期預金はインフレ対策としては「ナシ」という結論に至りました。

ただし、定期預金が毎月分配型投信のように何の役にも立たない金融商品だと言っているわけではありませんので念の為。わずかばかりのインフレリスクを負う覚悟さえできているなら、悪くはない選択だと思います。

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2015年04月27日

早期リタイア後もインデックス運用を継続中

さいもんさんのブログより。
早期リタイア達成者がインデックス投資を続ける危険性│ひとり配当金生活
例えば積み立て型のインデックス投資家が資産形成に成功して早期リタイア達成したとして、その後もインデックス投資を続けるのは怖くないのかな?という疑問があります。
私の資産運用方針がまさにこのパターンに該当するので、私なりの回答を。

答が「怖い」「怖くない」の二択であれば「怖い」です。
しかし、どんな運用方針であれリスクを負担しているのであれば怖いのは当たり前で、その漠然とした感情を根拠に運用方法を変えるようなことはしません。

さいもんさんの素朴な疑問の裏には、「リタイア後にはリタイア後に相応しい資産運用の仕方があり、それはインデックス運用ではない」という考えを暗に含んでいるように感じられます。
だとすれば、それは一体どんな運用方法なのでしょうか? さいもんさん自身が実践している高配当日本株のホールドがそれに該当するというのであれば、世界市場でのインデックス運用よりも優れている根拠を示して欲しいと思います。

実際にセミリタイア生活に突入している私にとって、机上の理論も大事ですが実践面は何よりも大事です。
数十年後に、理論的には正しかったけど実際は駄目だったわ、では洒落になりません。
どんな運用方法を採用するにせよ、数十年後の運用結果がどうなっているかは「わからない」としか言えません。実践面が大事とは言っても予め未来の事象を知るすべは無い以上、理論的に正しいことに賭けるのが最も合理的な選択だと私は思います。

理論上正しい選択をしても「実際は駄目だったわ」に終わったらどうするのか? その駄目な結果に合わせて生き方を下方修正していくだけのことです。
関連記事:老後不安をどう考えるか

もし駄目だったら「洒落にならない」と感じてしまうほど経済的リスクに敏感すぎる人は、単にその運用方法が自分のリスク許容度をオーバーしているだけのことなので、ポートフォリオを見直すなどしてリスクを下げればよいのです。人によっては個人向け国債や定期預金のみの運用が最適という場合もあるでしょう。それでも決してノーリスクという訳にはいきませんが。

ただ人間の寿命には限りがあるので、20年くらい低迷期が続くとかなり苦しくなります。
今までがまさに失われた20年でしたよね?
失われた20年って日本市場という、時価総額にして世界の10%にも満たない市場での出来事ですよね。
もし1995年からの20年間を世界市場ポートフォリオでインデックス運用していたら、理論通りの素晴らしい結果になっていたのでは?

しかしセミリタイア達成後に、相場がグダグダになった時にそれまで単純な積み立て投資しかしてこなかった人が戦略を維持できるのかな?という疑問があります。なんせもう継続的な追加投資は難しいのですから。
リタイア達成からわずか1年後にリーマン・ショックの洗礼を受けた私が、リタイア後も資産を取り崩しながらインデックス運用を継続しているサンプルです。暴落時に追加投資なんて必要ありませんでした。ただじっとしていれば嵐は過ぎ去り、資産残高は力強く回復しました。
関連記事: 2014年末の資産残高推移

逆に、インデックス運用で暴落に耐えられないのだとすれば、一体どんな運用なら耐えられるのかなと思います。そんな魔法のような方法があるなら私も知りたいです。

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2014年12月31日

2014年末の資産残高推移

一年前の記事。
2013年末の資産残高推移

今年の資産残高は+15.4%という結果になりました。
年間支出の方は5%ほど減少。消費税増税や円安インフレで体感的には支出増の一年だったのですが、やや意外な結果となりました。

リタイアした年である2007年からのデータを並べてみましょう。
2007年: +6.8%
2008年: -37.4%
2009年: +17.3%
2010年: -4.7% 年齢+ACR=77
2011年: -13.7% 年齢+ACR=76
2012年: +19.2% 年齢+ACR=89
2013年: +31.5% 年齢+ACR=106
2014年: +15.4%  年齢+ACR=120

これで3年連続で名目資産が増えたことになります。リタイアすれば資産は減るのが当たり前だと思っていますので、これは一応嬉しい誤算と言えるでしょう。2008年の暴落にも狼狽することなく市場に留まり続けた冷静さ(鈍感力?)が、少しは報われたのかなと思います。

グラフにするとこんな感じ。青線の方です。
assetgraph-2014.png

赤線はUSD換算した資産残高推移です。こうして並べてみると、JPYベースよりも変化が緩やかな折れ線になっていることがわかります。2008年の暴落もドルベースだと−22.9%で、円ベースより随分マイルドな印象に変わります。

要するに、JPYというモノサシの長さがここ数年で大きく伸び縮みしているからですね。柔らかいゴムでできたクニャクニャのモノサシをイメージしてみてください。モノの長さ(購買力)がちゃんと測れる気がしないでしょう?

ドルベースで見ると、今年の資産残高は僅か1.6%の増加に過ぎません。両者の差13.8%は、昨年末と現在の為替レートの変動率とほぼ一致します。つまり、円ベースで大きく資産が増えたように見えるものの、その大部分はアベノミクスの円安誘導による貨幣錯覚効果でしかなく、購買力はほとんど増えていないことがわかります。

最近、株を持っている人だけが「アベノミクスの恩恵」を受けている、という表現を見かけることが多くなりました。でも上記のように円以外のモノサシで眺めてみると、実際は株を持っている人でさえも実質的な「恩恵」はほとんど無いのかもしれません。日本円しか持っていない多くの日本人がインフレ政策や増税でじわじわ貧しくなっていく中、インフレ抵抗力の高い資産を持っている人たちは辛うじて現状維持できているだけのことではないかと思います。

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2014年12月08日

特別な収入なんてどこにも無い

ITTINさんのブログにこんな記事がありました。

独身一人暮らし女だからこれからどうやって生き抜いていくか考えるブログ 「ボーナスの使い道」に違和感
「現在の総資産」から、何をしようか、いつ行おうか考える。

そのように考えると、消費するとしてもわざわざボーナスの支給月に合わせて消費する必要がありません。
というわけで、毎回ボーナスは「〇〇に使った」という実感がないまま資産に吸収されて終わります。
なるほど。
私も「ボーナスの使い道」については現役時代からモヤモヤしたものを感じていたものの、ボーナスどころか月給も無い生活になって忘れかけていたところ、この説明がストンと腑に落ちました。

「ボーナスをもらったら、”ボーナス額分”の使い道を考える」という人は、
「ボーナスは普段の給与とは完全に区別される特別なもの」として捉えていると言うことなのでしょうね。
そのようですね。
普段からあればあるだけ使って貯金もしない浪費家ならいざ知らず、普通に倹約するタイプの人でもついお金に色を付けて考えてしまう人が少なくない印象です。
メンタルアカウンティング(心の会計)と呼ばれる脳の癖が、具体的な行動として表れる典型例の一つだと思います。

似たような記事がこちらにも。
儲かった時は貯金して、貧乏なときにパッと使う | SOUTAi 40
収入が多い時は貯金して、将来の「サラリーマンをリタイアして収入が減った自分」「年をとって働けない自分」に恵んであげる。

これができない人がけっこう多い。儲かっている時にパッと使い、貧乏な時にあわてて節約する。だからお金が貯まらない。
収入が増えるとつい支出も増やしてしまう。これをやってしまうとリタイアは遠のくばかりです。
収入が多かろうが少なかろうが、そんなのは支出の変動とは無関係です。
たとえば現在の私はほぼ無収入ですが、それに合わせて支出を絞ったりするのは間違いで、支出を調整するファクターは、(収入加算後の)資産残高と人生の残り時間だけです。このようにシンプルに考えることができれば、リタイアするには何らかの「不労所得」が必要だという思い込みからも解放されるでしょう。

現役時代であれば、臨時収入があったら支出を増やせると考えるのではなく、その分だけリタイアが早くなると考えればいいのです。

収入も支出も変に色を付けて特別なものとそうでないものに細分化する考え方は有害で、できるだけシンプルに、長いタイムスケールでトータルの収支を考えることが大事だと思います。

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2014年10月18日

老後不安をどう考えるか

前回の記事、リタイアに型というものがあるならばに次のようなコメントがありました:
人間には寿命があるのですが、その寿命がいつ尽きるのかは誰にも分からないのが問題なのでしょう。
自分はいつ死ぬか分からない。
しかし、資産は確実に減っていく。
寿命が尽きる前に資産が尽きてしまったら、その時点で生きていけなくなる。
「寿命がいつ尽きるのかは誰にも分からない」について。
「わからない」の程度にも、皆目見当がつかないものから平均値や確率分布はわかっているものまで色々あって、人間の寿命については後者です。50年後の人口分布がかなり正確に予測できるのはこの性質によるものでしょう。たとえば未来の株式指数の確率分布は分散が大きいので、30年後ですら正確に予測することは困難です。そういう種類のわからなさと比較すれば、「寿命がいつ尽きるのかは、大体の範囲と確率はわかっている」とも言えます。

「寿命が尽きる前に資産が尽きてしまったら、その時点で生きていけなくなる」について。
そうとは限りません。現在資産がない老人も普通に(年金で)生きています。将来は資産がなければ生きていけない世の中になっているというのは一つの悲観的な未来予想図だと思いますが、当たる保証はありません。

もう一つ、「資産が尽きる」という事象は、ある日気付いたら突然訪れるというものではありません。そうなる以前に、あとX年で資産が尽きそうだという状態を必ず経由します。そのX年と自分の余命を比較して、何らかの手を打つ猶予があるということです。その間にBライフや外こもりなど、知恵を使って生活コストを抑え、資産が尽きるのを遅らせる余地は残っていると思います。

タイムリーなことに、老後不安について次のような記事を見かけました。
「老後不安」と資産運用|山崎元のマルチスコープ|ダイヤモンド・オンライン
特に、老後不安については、定年退職までに十分な資産がないと「老後難民」になる、などと脅かされると、心配がどんどん膨らんで来る。普通の人には過剰な想像力があるので、不安がゼロになることはほとんどない。
そうですね。
不安があるからといってそれを消す方向に向かって努力するのではなく、不安が消えない事実を受け入れ、うまく付き合っていく方が、限られた人生の時間を無駄にせずに済むと思います。

稼ぎがゼロの前提で、老後の生活を現役時代と同様の水準で確保するためには、年金をあてにしないとすると、今後の運用益を考えても少なくとも年間支出額の20年分くらいの蓄えが必要だろうが、これは通常の人の現役時代の運用額では、よほどの高利回りがないと無理だ。
60歳の時点で20年分の生活費を残すことは、早期リタイア志向の人にとってはごく控えめな目標に過ぎません。それを無理と言ってしまうということは、山崎氏の生活レベルが相当高いのでしょうね。

たとえばリタイア後から25年生きるとして(65歳でリタイアなら90歳まで)300ヵ月となるが、自分の純資産額を300で割り算してみよう。ちなみに、95歳まで考える人は360で、100歳まで考える人は420で割り算するといい(筆者は360で考えている)。

こうして求められた金額が、リタイア後に毎月取り崩していい金額だ。
早期リタイアの場合も基本的な考え方は同じです。分母が300や360ではなくもっと大きい数字になるという違いがあるだけで、想定する余命が長いからといって資産を取り崩すことを忌避する理由はありません。

生活レベルが変わることはあるとしても、「暮らせない」という心配は案外小さいのではないか。「老後」を事前に怖がりすぎるのは考えものだと思う。
同感です。
今の生活レベルが既に最低限でこれ以上下げることができないという感覚は単なる思い込みに過ぎず、使えるお金が少ないなら少ないなりに、何とかする知恵や手段はあるだろうと思います。今から老後の心配ばかりしていては、まだ老後でない今の人生を楽しく暮らせないのではないでしょうか。

関連記事: 『未来の働き方を考えよう』 ちきりん(著) その1

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2014年10月13日

リタイアに型というものがあるならば

さいもんさんのブログにこんな記事がありました。
資産取り崩し型のリタイアについて│ひとり配当金生活(予定)
リタイア後の資産残高推移について、年々減少していく資産取り崩し型、配当金や年金、節約などで収支が釣り合う資産均衡型、減るどころか資産運用によって増えていく専業投資家型の3タイプがあると思う。
この分類に当てはめれば、私は資産取り崩し型のリタイアということになりそうです。

当ブログで年末年始に記録している通り、実際には持っている資産の評価額は毎年変動するので、「年々減少」するとは限らず、たまに増えることもあったり、その逆に2008年のように大幅減の年もあったりしますけど、平均的には資産が減っていくのが当たり前という前提でプランを立てていることは確かです。
関連記事: 人生の前半では時間を売り、後半では時間を買う

私が疑問に思ったのは、もし資産が減らない、または増えるタイプのリタイアの型があるとすれば、いったい何のためにその型を選択するのかという点です。

人間には寿命があります。言い換えれば、一人ひとりが持っている時間というリソースは有限で、毎年「確実に」減っていきます。資産と違って、たまに増えたりはしません。たとえば40歳の人の持ち時間は、平均寿命を80歳とすれば、1年で2.5%減少します。50歳ならマイナス3.3%、60歳ならマイナス5%。

リタイア後に資産を減らさない努力を続けたとしたら、資産は維持されるけれども人生の時間は容赦なく減り続け、やがて残り時間の少なさと比較して不相応に過大な資産を持つ状態に至るのではないかと。死ぬ間際に過大な資産が残るのはもちろんのこと、高齢になってから慌てて財布の紐を緩めて過大な消費を始めるというのもまた、色んな意味でもったいない話だと思います。

今までは定期収入があり資産は増える一方だったので、確実に資産が減っていく取り崩し型のストレスに耐性がない。
投資経験があると種銭の有るありがたさは身にしみてくるし、それが減っていくというのは恐怖なのだ。
気持ちは分かります。どういう場面でストレスや恐怖を感じやすいかは人類の脳に共通する特性ですから。資産が目減りする恐怖との付き合い方に書いた通り、私の脳にも同じような恐怖は確かに存在します。

しかし私にはストレスや恐怖に耐えているという自覚はありません。意識しているのは、頭の中にそういった感情が湧き起こったときに、それを冷めた目で時間をかけて評価して、間違っていたら淡々と却下するもう一人の自分の存在です。この本でシステム・ツーと呼ぶ脳の機能です。この人は誰の脳にも存在する有能な怠け者で、バンバン尻を叩かないと全く仕事をしません。この人が怠けている間は、もう一人のシステム・ワン(原始人)のやりたい放題です。

お金が足りるかどうかじっくり考えた結果として足りないことが判明したからではなく、ただお金が減ること自体に恐怖や不安を覚えるのであれば、それはもう原始人の直感そのものです。予想どおりに不合理と言うしかありません。そういう直感の命ずるままに動けば判断を誤ることになりかねないと思います。

参考記事: 404 Blog Not Found:恐れのみを恐れよ - 書評 - リスクにあなたは騙される

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2014年08月07日

「銀と金」のセリフから考えたことと、「○○で生活する」という縛りプレイ

当ブログへのアクセスランキングに新しくランクインしていたブログに、次のような記事がありました。

金利で食うのは庶民の夢か?│ひとり配当金生活(予定)
もう20年ぐらい前の作品ですが、福本伸行の怪作漫画「銀と金」の作中に、金利で食うのは庶民の夢、っていうくだりがあるんですよ。で、仕手本尊の梅谷の答えがこれ。今でも印象に残っています。

「ぼうず……それは死人の考えや……。
血の通った人間が金持ったら、そうは考えん。
10人中、9人は考えなくなる……損を承知で人は生きられんのや。
それほど銀行金利は低い……あの低さはサギやからな。
サギ師に騙されながら生きるのも気分が悪い。」

 作中での銀行金利は6パーセントくらいあった時代の話です。
無リスク資産(インフレの懸念はありますが)で6パーセントの利回りは今では考えられませんが、当時はそれでも銀行に預けるのは馬鹿だと思っていたんですね。
この作品はまったく知りませんが、このセリフに込められた意味を勝手に想像してみるに、なかなか興味深いテーマを含んでいるような気がして、引用させてもらいました。

銀行金利が6%も付くのに、その金利で生活するのが「死人の考え」というのはどういう意味なのでしょうか。もしかしたら、私が以前「金利で生活すればお金は減らない」という錯覚に書いたように、銀行預金の金利のみを引き出して元本を維持してもインフレで購買力は目減りするんだよ、と暗に指摘しているのではないかと思うのですがどうでしょうか。

銀行金利≒インフレ率という前提に立てば、「それほど銀行金利は低い」というのは、金利が6%の時代にも0.1%の時代にも等価な意味をもつ言葉です。銀行預金のような、金利込みでぎりぎり購買力を維持できそうだけど、税引き後には下手したら実質リターンがマイナスになる金融商品ではなく、超過リターンが期待できるものに投資するのが血の通った人間の考える事だと言いたいのかなと、私なりに想像してみました。


ところで、「金利で食う」に代表される、不労所得だけで生活するスタイルが金持ちの象徴と思われているというか、庶民からは一種の憧れの対象とされているようなフシがあります。早期リタイアを志向する方のブログにも「○○で生活する」系のものがとても多い印象です。○○に入るものは配当金、分配金、スワップ収入、家賃収入など色々あるようです。

そういうスタイルを見聞きするたびに思うのは、「○○で生活する」のはゲーム用語の「縛りプレイ」とよく似ているということです。

縛りプレイとは (シバリプレイとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
ゲームをプレイする際、本来ゲーム側からは設定されていない制限(縛り)を自ら科す事によって、より難易度の高いゲームをプレイする事。

普通にクリアできる難易度のゲームでも、たとえば強い武器を使わないというような制約を自主的に課してプレイすると、たちまち難易度が上がります。オンラインFPSなどでは、火器を一切使用しないナイフ縛りの対戦で盛り上がることもあるようです。

「○○で生活する」というのもそれと同じ自主的な制約じゃないでしょうか。生活に必要なお金をどこから持ってくるかについては、本来何の制約も無いはずです。もちろん、金利や配当がダメだと言ってるのではありませんが、そういった特定の種類のお金に限定する必要はありません。普通に銀行預金をおろしてもいいし、株式やETFを売って現金にしてもいいでしょう。どういう方法にするかは、その都度自由に決めればいいはずです。

ゲームなら難易度が上がってかえって面白くなることもあるでしょうが、リアルライフではわざわざ自らに縛りを課して難易度を上げてもあまりいいことは無いと思います。

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2014年04月07日

分散投資で早期リタイアは不可能?

こんなタイトルの記事が目に止まりました。

分散されたポートフォリオで早期リタイアするのは極めて困難:インデックス投資と労働で経済的自由を目指す:So-netブログ

私の頭にある常識とは正反対の結論なのでちょっと驚きました。中身を見てみましょう。
 株式投資で分散されたポートフォリオの代表といえば、インデックス投資です。
 1306やVTに投資した場合、1,2年で2,3倍になることはないと思います。
 これに債券投資が加われば、リスクが減る分リターンも減少し、資産の増加ペースはさらに減少するでしょう。
 つまり、債券投資も含む分散されたポートフォリオで早期退職することは事実上不可能なのではないかと思うのです。
1〜2年で2〜3倍というと、年率42%〜200%という驚異的なハイリターンです。このようなペースで資産を増やせなければ早期退職できないという意味でしょうか? そうだとしたら明らかに論理の飛躍だと思います。

リタイアのための資産を増やす方法は資産運用だけではありません。毎年、働いて得た収入から支出を引いた残りのお金が資産に繰り入れられます。普通は誰でも資産ゼロからのスタートですから、収入の一部を使わずにとっておくことが資産形成の唯一の手段ですし、資産形成のスピードは、その「一部」の大きさ次第と言えます。

実際のところ、インデックス投資で早期リタイアしたとは聞いたことがありません。
確かに、
「インデックス投資のリターンが素晴らしく、驚くほど儲かったから早期リタイアできました!」
という人は聞いたことがないかもしれません。
ですが、早期リタイアを実践している人の中にも私のようなインデックス投資家は実在します。おそらくもっと多いのはインデックス投資すらやらずに、せいぜい銀行の定期預金のみで早期リタイアした人でしょう。彼らの共通点は、十分な資産を持つに至った主たる理由が資産運用ではないことです。

 もし、インデックス投資で早期リタイアができるとすれば、○○危機とか●●ショックで株価が大暴落した時にドルコスト平均法で資金を投入し、株価低迷時はじっと我慢、ある程度戻ったら、少しずつ売却して儲けを確定する。

 これを、数千万円体単位で2,3回繰り返すしかないのではないでしょうか?
こういう手法はインデックスを利用しているだけで、その実態はアクティブ運用です。相場が低迷しているから買い時だとか戻ったから売り時だとかいうのは、あくまでも後になってから判明することであり、その時点で将来の相場は予想できません。実際、アクティブ運用をしているプロのファンドマネージャーの多くがインデックスに負けています。アクティブ運用がリタイアへの近道とは思えません。近道をしようとして、かえって遠回りになるリスクが大いにありそうです。

ちなみに私が考える早期リタイアへの一番の近道は、
「収入より遥かに少ない支出で生活すること」
です。
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posted by 遊民 | Comment(1) | TrackBack(1) | 資産運用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


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